金属をところてん式に押し出す
複雑な形のパーツでも、一度の押し出しで作ることができる押し出し成形という金属加工の方法があります。硬い金属を押し出すなんてイメージしづらいかもしれませんね。
確かに、押し出し成形の方法は、硬い金属にはあまり向きません。アルミは金属の中では柔らかい部類の素材なので、押し出し成形に適しているのです。
ところで、アルミ押し出し材は一度の押し出しでなぜ複雑な形ができるのでしょうか。
複雑な形ができる秘密は、押し出し成形に使われる「金型」に秘密があります。アルミ押し出し成形は、アルミ材料をところてんのように押し出すことで形作る方法です。
ところてんを押し出すための機械を金型だとすると、アルミ押し出し成形ではアルミが金型の中で立体的に押し流され、出口側で再びつながるように作られているのです。
そのため、複雑に穴があいているような棒状のパーツのようなものも一度の押し出しで作ることができるのです。
押し出し後の加工
ちなみに、押し出しはアルミ材を金型に通すことによって成形する方法ですが、押し出しと同じように金型を通す成形法に引抜と呼ばれるものもあります。
引抜は、常温の材料を金型に通し、押すのではなく引き抜くという方法です。
さて、押し出し成形によって形作られたアルミ押し出し材は、耐食性を強めるために皮膜加工が行われることがほとんどです。
アルミはもともと放っておいても薄い酸化皮膜を作る素材ですが、電気を使ってアルマイト加工という方法を行うと、さらに安定した酸化皮膜を作ることができます。
アルマイト加工をすることによって、アルミ押し出し材の耐食性が高まり、装飾性や耐摩耗性も向上させることができるのです。また、アルマイト処理を行ったアルミは、目には見えない穴(=孔)がたくさん開いています。
多孔質と呼ばれる状態です。そのため、アルミ押し出し材のアルマイト加工をしたあとは、孔を埋めるための「封孔処理」や、孔に無機物を析出させて着色する電解着色といった加工を行うことが多いです。